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ドナルド・E・スーパー

ドナルド・E・スパーの理論は、 「生涯を通じて個人がどのようなキャリアの段階を踏んでいくか、ある時点において、個人のキャリアはどのような場面でどのような役割を果たしているのか、そして、個人のキャリア選択につながる、内的・外的なチカラは何か」などを取り上げるものです。
スーパーは、多くのい著書や雑誌論文を出している熱心な研究者で、仕事の価値観やキャリアの線tカウンセラーを行うスキルのレベルを測定する様ざまな手法を開発しています。

スーパーの理論の中核的な概念と考え方

Ⅰ自己概念
1・自己概念キャリア開発の過程は、自己概念の形成、発展と受容、探索と自己吟味、自己概念の実現(職業的自己実現)へと、順次進展する過程としてとらえることができます。 このように、スーパーの職業的理念において、中核をなしているのは自己概念であり、とても重要な要素となっています。

スーパーによると、私たちは誰でも「自己概念」を持っており、その自己概念とは、「時運はなにものであるか」「どういう存在であるか、」という自己イメージのことで、もう少し具体的に言えば「自分は何が好きで、何が嫌いか」「どんなことをしていると楽しいと感じる人間であるか」「自分は引っ込み思案である」などといったことです。
この自己概念は「自分をどのように見るか」「自分はどうありたいか」「他人は自分をどう見ているか」を融合してできていると考えます。
スーパーによると、ある特定の分野における自分をどう見るか(例えば、数学のクラスではどんな生徒か、他の人たちと仲良くやっていけるかなど)は、その人がどのような強化を受けるかによて、強まったり弱まったりするとしています。例えば、数学が得意でテストの成績もよく、先生からもたびたび褒められるなどしていると、それはプラスの強化として働き、これによってその人は数学の能力に関して高い自己概念を持つようになります。
反対に、数学が苦手でテストの成績も悪く、先生や両親からもっと頑張るようにたびたたび言われていれば、このようなマイナスの強化によって、その人の数学に関する自己概念は低いものとなります。

2.自己概念と自己認知認知とは、自己が自覚したもの、観察したもの、印象付けられたものの映像のことであり、それに対して、概念は、認知が組織化されたものとスーパーは述べています。
例えば、「私はメガネをかけている」「仕事の場面ではよく歩き回る」「英語を話す」というように、一つひとつ自分自身について知覚した映像があるとします。
この近くに基づいて構成されるのが、その人の自己概念であると言えます。
つまり、自己概念とは自己について知覚されたものが統合され、組織化されてものなのです。

3.自己概念の形成は、乳児期から始まります。
周りの人や世界そのものから次第に自己を独立した存在として理解するようになっていくのが、第一過程(分化)です。2・3歳になると、ひとたびは分化した対象と同一化(同一視)が始まります。
両親と暮らしている場合あれば、同性の親の方に無意識にイメージを重ね合わせ、高度や感情を模倣するようになっていきます。これが第二の過程です。
第三の過程では、具体的な職業名を伴った同一化が始まります。
即ち、父親がパン屋であればパン屋に、母親が教師であれば教師という役割モデルに自分を置き換えてみます。そして、成長するにつれて役割モデルは両親から周囲の大人へ、本やテレビの登場人物へと広がっていき、イメージが膨らんでゆくのです。
ときには、災害に遭って救助の場で活動するなどの偶然の経験から新たな自己概念が形成される場合もあります。
また、自分の持っている特性や特徴を分析し、適合すると考えられた職業に重ね合わせていくということもあるでしょう。こうして人は、環境や経験からの影響を受けながら、一生を通じで独自の自己概念を形成し発展させていくのです。

4.職業的自己概念スーパーは、自己概念のうち、仕事や職業に関しては「職業的自己概念」を形成していると述べています。
スーパー理論の中心テーマは、個人は職業選択を通じて、自分の「職業自己概念」を実現しようとするというものです。

5.肯定的自己概念と否定的自己概念自己概念(自己イメージ)には、肯定的な自己概念と否定的な自己概念があります。人は誰でもこの両方の自己概念を持っています。
ある人は肯定的な自己概念をより多く持っており、ある人は否定的な自己概念のほうをより多く持っています。
肯定的自己概念は、人を積極的に行動させるチカラとなり、次のステップや道の課題や変化に対しても積極的に自分を開いていくことを動機づけるエネルギーとなります。
しかし、否定的自己概念は、自己に対する自身を失わせ、自尊感情を低下させます。そのため変化に対して前向きに受け入れることができずに未知なものに対しては恐れのほうが強くなり、したがって行動を自ずと消極的で意欲も低いものとなります。
特に変化が常態化するこれからの社会で生きていくためには、できるだけ肯定的自己概念を形成しておくことが望ましいといえます。
否定的自己概念は、職業選択も不適切なものになったり、不満足な結果をもたらすことにもなります。また、職業生活への不適応をもたらしたり自己のキャリアの発展させることも難しくなります。

6.妥当な映像を現実吟味自己概念には、現実によく合致したものもあれば、円実に合致していない非現実的なものもあります。現実によく合致した自己概念をスーパーは「妥当な映像」といっています。
「妥当な」とは、現実吟味に耐えたという意味です。
現実吟味は、現実に照らしてどうであろうかと吟味することで、キャリアカウンセリングをおこなう過程において、絶えず繰り返して行われるものです。
第一の現実吟味段階は、自己認知から自己概念が形成されるところにおいて行われます。第二の現実吟味段階は、自己概念の明確化に伴って、実際に行動に移すときに行われます。
第三の現実吟味段階は、探索的な行動をすることによって、その人の自己概念が現実妥当なものであるかどうかがハッキリしてくる段階です。
それぞれの段階で、自己概念が現実性を欠く物(空想的であったり、不正確で間違った認知から生まれた自己概念)であったときは、自己概念の修正が行われたり、ときには現在の自己概念をいったんバラバラにして、もう一度組み直すための再構成が行われることもあります。
いずれにしても、現実離れした自己概念に基づいて、職業の選択をおこなおうとすれば、望ましい結果を得る事はできません。確かな職業的意思決定のためには、現実妥当な自己概念の形成が必要不可欠です。

7.職業的成熟スーパーは、職業的成熟を測定し、評価する方法として「職業的成熟指標」の開発も努める。この場合成熟とは、現在及び将来において対処し、達成しなければならない課題に照らしてみたときの、個人の行動や態度とされ、その指標として図表3-1を示しています。
職業的成熟の考え方はその後クライツ羅に引き継がれています。
クライツはスーパーの職業的成熟測定の指標を整理して、次のようなキャリア成熟の因子モデルを提案しています。

8.自己概念と職業選択これまで見てきたことをまとめると、自己概念と職業選択の関係について、次のことがいえます。
① 自己概念が不明確、もしくは低いものであると、職業選択も不適切であったり不満足な者になってしまう。
② 仕事とが、「自分の能力(最も得意なこと)」や「興味(最もやりたいこと)」、「価値(本当に重要だと思っていること)」を表現するものである。そうでなければ、仕事は退屈で無意味なものになってしまう。
③ 適切な職業選択には肯定的な自己概念が必要である。この肯定的な自己概念を形成するためには、日常接している周囲の人(子どもや家族、生徒、従業員、友人など)から与えられるフィードバックが極めて重要である。 ※③は相手に偽りのイメージを与えるということではありません。相手のプラスのサポートを与え、相手が自分の能力について、できる限り肯定的な見方ができるように援助していくことが職業選択においても人生全般にいおいても、大切なことであることを意味しています。

Ⅱライフステージとライフロール

ほとんどの物事には基準があり、キャリアも例外ではありません。
スーパーの理論では、キャリアには2つの理論があります。一つはキャリアの「長さ」であり、もうひとつは「幅」です。前者を「ライフステージ(キャリアの段階)」、後者を「ライフロール(キャリアの役割)」とよんでいます。
満ち足りたキャリアであるためには、日とは個人的な興味と能力を活かし、自分が大切だと考える価値を得られる活動をおこなってキャリアの長さと幅を満たさなければなりません。}
キャリアの長さと幅を充実させるには、キャリアを築く援助となるいくつかの発達課題をこなさなければなりません。そこで、個人のキャリアを発達させるライフステージ、ライフロールおよび発達課題を説明します。

1.ライフステージスーパーの理論が全米に大きな影響を与えるまでは、若者は高校時代に職業を選択するべきだと考えられていました。一度職業を選べば、そのための訓練を受けて職業に就き、職業人生を通じ壊疽の仕事を続けるものだと考えられていたのです。
そのため、興味や能力にあった職業選択をおこなう際の援助は若者だけを退社うとして考えられており、社会人に対するキャリアプランニング上の支援は行われていませんでした。このような一回限りの職業選択という考え方は、日本でも米国でも、もはや意味を失っています。
スーパーは、キャリアデベロップメントについて、個人の一般的発達の一側面であると述べています。
スーパーは個人の一般的発達は、一本の線のように連続しているが、主要な段階(人生段階)に分割することができ、それぞれの段階は固有の特徴を持っているため、ほかの段階と区別して考えることができると述べています。
そのうえで、一般的発達の一側面である職業的発達も同様に、それぞれの段階が持つ特長によって、職業生活の諸段階に分割できるとしました。そおして、ビューラーの人生段階説に従って、職業生活を成長・探索・確立・維持・下降の5段階に区分し、それぞれの段階に職業的発達課題を対応させました。

第1期 : 成長期(0~15歳) 身体的成長、自己概念の形成が中心で、興味や能力の探究が始まる時期
第2期 : 探索期(16~25歳) 様ざまな分野のその仕事やその必要条件を知る。徐々に特定の仕事に絞り込んでいき、そのために訓練を受け暫定的に仕事を試みる。
第3期 : 確立期(26~45歳) ある特定の仕事にしっかりと根を下ろす。その仕事を通して責任を果たし、その職業分野に貢献し、生産的に活動し、職業的専門性を高め、昇進していく時期。
第4期 : 維持期(46~65歳) 確立してきた職業的地位を維持し、若い世代に負けないように、更に役割や責任を果たすために新たな知識やスキルを身につける時期。この時期の終わりには、退職に向けての、さらに退職後のライフキャリア計画を立てる。
第5期 : 下降期(66歳~) スローダウンし、すこしずつ有給の仕事から離れていく・。これまで以上に地域活動、趣味、余暇活動を楽しみ、家族との交わりの時間を過ごすための新しいライフスタイルを形成する時期。

②新しいライフステージ・モデルスーパーが最初に理論を発表した1950~1960年代と今とでは、大きく時代が変わっており、職業選択をおこなう際の状況も大きく変化しています。
スパー自身、1980~1990年代の著書の中で、この事実を認めています。
人々も企業も見方が変わってきたため、スーパーは言うところの「終身キャリア」は1950~1960年代に比べると、はるかに現実的ではなくなってきました。
そこで、スーパーは晩年の著書の中で「成長期、探索期のあとに、確立期を少し経て、しばらくしてまた探索期に戻って新たな職業選択をおこない、その職業で維持期に達しないことが普通になるかもしれないと、新しいライフステージ・モデルを認めています。
また、女性の社会進出や正規の教育を再度また受ける成人の増加、企業のダウンサウジング(規模の縮小)などにより、各課題や各段階にさまざまな年齢でアプローチするだろうとしています。

2.ライフロール ライフキャリアレインボーと役割 

スーパーはキャリアを、人生のある年齢や場面のさまざまな役割の組み合わせであると定義し、この概念をレインボー(虹)に例えて説明しています。ライフキャリアレインボーのように、人生における役割はさまざまな場面、つまり過程、学校、職場、地域社会なので演じられるものであるとしました。
スーパーによると、個人はこの役割をいかようにも組み合わせることができるとしています。
多くの人は、ライフステージの中で様ざまな役割を果たします。代表的な役割として、次のような役割があります。

●息子・娘 息子・娘という役割は、生涯を通じて親に注ぐ時間と労力です。この役割は、この世に生まれたときに始まり、両親がいずれも亡くなるときまで、50歳か60歳まで続くこともよくあります。
子ども時代は、息子や娘としての役割の時間がほとんどを占めます。
成長し、独立していくにつれて、この役割が全体占める時間や努力は次第に減ってきます。両親が年を取ってくると、今度は両親に対して特別な介護を行う必要が出てくることもあります。
息子・娘の役割はここで再び大きな時間と労力を要するようになります。この役割の場面は家庭です。最初は両親の家で、後年は子どもの家でということになるかもしれません。

●学生学生という役割は、時間的に息子娘の役割の次に出てきます。小学校に入学した時に始まり、ほとんどの場合最低でも義務教育の終了でま続きますが、たいていは高校や大学を卒業するまで続きます。学生という役割は、一生の間に何度もやってくると考える人が増えています。
そのためこの役割は、ライフキャリアレインボーに何度も顔を出します。システムプログラマーや販売担当者が勉強会や短期研修に参加すると、その時期は一時的に再び学生の役割を取ることになります。女性が子育てのあとに一念発起して大学に通い始めれば、同様に再び学生の役割を取ることになります。
これからの労働者は、継続的に訓練を受けながらスキルを向上させていくと考えられます。学生の役割の場面は、職業訓練校や技術訓練校、コミュニティカレッジ大学、家庭(自主学習やインターネットでの訓練)、そして職場そのものです。

●職業人職業人という役割は、初めてのアルバイトに始まり、有給で働くことを完全にやめる時点まで続きます。これからは職業人は次々といくつもの仕事に従事していることになりそうです。
職業人の役割の場面には事務所や研究所、病院、学校などがあります。さらに、IT時代には家庭なども場面となります。

●ホームメーカーホームメーカー、ホームメーカーという役割は、住む場所のメンテナンスする役割です。
スーパーの定義ではホームメーカーの役割は、料理や買い物、家具選び、家具の修理などです。この役割は女性だけの役割ではありません。
男性にも、ホームメーカーとしての役割があります。この役割に費やす時間は、見た目をどれだけ大切にするか、どこまで自分でやるかなどの違いから、家庭によって大きく異なります。ホームメーカーとしての役割の場面は、両親の家を離れて住居を構えたときに始まり、住居のメンテナンスに責任を持っている限り続きます。

●余暇を楽しむ人余暇を楽しむ人はスーパーの造語です。読書やテレビを楽しんだり、スポーツをしたり、レストランで外食をするなど、余暇活動に時間やエネルギーを費やす役割です。この役割の場面は通常、家庭や地域社会です

●市民市民という役割は、無給のボランティア活動に時間やエネルギーを費やす役割です。
この役割の場面は地域の病院、学校、その他地域活動への奉仕を行う場です ライフキャリアレインボーに示したさまざまな役割は、重なりあったり相互に影響しやったりしています。
ほとんどの人は多くの場面で複数の役割を同時に行っています。たとえば大学生なら、そのキャリアは「息子・娘」「職業人」の役割が組み合わさったものかもしれません。成人の場合は、「学生」「息子・娘」「職業人」「市民」といった役割を併せ持っている事が多いでしょう。
また役割の中には、他よりはるかに時間を取るものもあります。したがって、ライフキャリアレインボーのそれぞれの帯の幅はさまざまです。帯は他の帯より輝いている、より集中して取り組んでいるということもあるでしょう。また、役割は一生の間に変化します。
「職業人」としての役割は、確立期においては大変でも、維持期や下降期にはそうでもなくなるかもしれません。人生で味わう満足感やストレスは、自分の役割の数や組み合わせに直接関係していることが多いものです。新たに別の役割だけ加わると、それまでの役割に費やす時間やエネルギーをえない減らさねばならなくなります。
反対に、アル役割をやめたり、関わる時間を削ると、残りの役割もっと時間やエネルギーを費やすことができます。 退職がその良い例です。1週間に40時間以上費やして給料のために働くということがなくなれば、たっぷりと時間やエネルギーを「市民」「ホームメーカー」「余暇を楽しむ人」などの役割に注ぐことができます。このように人生やキャリアとは、「人生における役割をいくつか選んで組み合わせることで、自己概念を実現しようとする試みである」とらえることができます。そこで選ぶ役割は、必要な時間やエネルギーがそれぞれ異なります。
こうした人生の役割がすべて合わさって人生空間(ライフスペース)を満たしています。このさまざまな役割をうまく果たすことができ、本人が満足できる場合には、その人のキャリアは成功していると言えます。役割の組み合わせが満足感をもたらしてくれない場合は、役割を付け加える、減らす、あるいは力の入れ方や役割の内容を変える必要があるかもしれません。

Ⅲ 価値観の大切さ

スーパーは後年、仕事の重要性研究という国際的な研究を指揮しました。
この研究の目的は、人々が労働を通じて得ようとするさまざまな価値をリストにし、それが価値の重要性が文化によって異なるかどうかを見ることでした。この研究で特定された価値は14種類ありつぎが、その簡単な説明です。

~14の労働価値~
●能力の活用・・・・・自分のスキルやCCキーを発揮できること。
●達成・・・・・良い結果が生まれたという実感
●美的追及・・・・・美しいもの見出し、または創り出すこと
●愛他性・・・・・人の役に立てること
●自律性・・・・・自律できること
●創造性・・・・・新しいものや考えを発見したり、デザインできること
●経済的報酬・・・・・お金を稼ぎ、高水準の生活をすること
●ライフスタイル・・・・・自分の行動自分で計画し、自分の望む生き方ができること
●身体的活動・・・・・身体を動かす機会を持つこと
●社会的評価・・・・・成果を認めてもらうこと
●危険性・・・・・危険な、またはわくわくするような体験をすること
●社会的交流性・・・・・他の人といっしょにいて、グループで働くこと
●多様性・・・・・活動をたびたび変えることができること
●環境・・・・・仕事その他活動にとって、環境が心地よいこと この研究は、初期は当時仕事に焦点は置いて分析や勧められました。

しかしその後の研究で、仕事において見いだせない労働価値であっても、他のライフロールを遂行する間に、その労働価値の重要性を認識することができることが明らかになりました。

たとえば、愛他性という労働価値は、何らかの形で人の援助をする職業につくことで達成することもできるし、ボランティアや地域活動の役割が、親という役割で満たすこともできます。このように、個人は自分にとって重要な価値観もそれぞれのライフロールにおいて達成しようとします。

Ⅳ キャリア決定のアーチ  
~21世紀に向けたのスーパーの理論の統合~

1990年、スーパーは生涯のおわりに彼自身のさまざまな議論を「キャリア決定のアーチ」という図にまとめました。自己(自己概念)がアーチの行動の要になっていますが、「キャリアデベロップメントにおいて、最も重要な要素は自己概念である」というスーパーの説がここにもみと見て取れます。
そして自己はその人の発達段階と人生のさまざまな役割において、自分自身に対して抱いている概念で支えられています。最も面白いのは、キャリアを支える2本の柱です。
左側の柱が、その人独自の諸特性、つまり興味、特有な適正、価値観、適正、欲求、知能で、これらが合わさってその人のパーソナリティーを形成してます。右側の柱は、個人に対する外的要因で、自分の力では変えることもできないものです。この柱に含まれる要因は、経済情勢や社会の影響、現在の社会政策労働市場の現状所属集団や家族、学校、地域社会の影響などです。つまりこの図が、「キャリアとは外的な個人特性と、外的な社会特性に支えられている」ということを表しているわけです。

Ⅴ スーパーの理論の適合

スーパーの理論も大学や企業の場で、どのように適用できるかを示します。 ~

大学~
1 確固とした現実的で明確な自己概念を形成確立させる。
2 適切な職業選択を行なうため、興味・能力・価値観を明確にするアセスメントを一定期間おいて2度以上行なう。興味・能力・価値観に関する結果を比較し、時間が経過しても変わっていないかどうかを見る。
3 自己の興味・能力・価値観にあった職業選択をするための情報収集する。学生が自分のアセスメントの得点と職業の選択肢を簡単に関連づけて見られるように体系化した職業情報を提供する。本人が興味を持っている職業のアルバイトを勧めたり、その仕事を実際に行っている人と話をするなどして、その職業に、ついてもっと詳しく知ることを勧める。
4 キャリアは幅広い意味をもっており、人生の役割を幾つか組み合わせたものであること、役割の組み合わせを通して、その人の興味や能力、価値観を表現するということを理解させる。


~企業~

1 仕事に関する個人の自己概念の重要性を理解させるとともに、より広い意味でキャリアをとらえさせる。
2 これからは各個人が企業のニーズと自分自身のニーズを満たすために、自分のキャリアを管理し、転職をする必要も出てくることを認識させる。これはスーパーの要を借りれば、確立期を完成して、維持期に至ることなく、探索時に後戻りする。従業員もいるということで、そのような従業員は、会社の内外を問わず、別の仕事を求めるようになる。ということである。
3 維持期にいる人たちが若い労働者と有利に競争でき、会社に貢献し続けるために、従業員にとって継続的な訓練が必要であるということを認識させる。維持期にいる従業員を対象に、スキルの習得のための研修を設定する。
4 個人はその興味や能力を仕事に生かし自分の持っている何らかの価値観を仕事の中で達成できるときにこそ、最も良い働きをするという考えを認識させる。個人の特性に関連した仕事に配慮する。
5 人生の各時期には、それぞれ異なる課題があり、人には、事前にその準備をする必要があるという考え方を習得させる。たとえば次のような研修を開催する。中高年齢者の従業員が引退への移行を理解し、金銭面だけではなく、時間の使い方という点でも、退職後の計画を立てられるように具体的に指導する。
スーパー理論の要点

 スーパーは、キャリアを大きく2つの視点でとらえました。

1つ目は、「ライフステージ」です。
人生を時間軸で5つの段階に分け、それぞれの段階で人としての特定の課題があるとし、そして、その課題に取り組むことを通じて、個人が人間的な成長を遂げていくということをステージにとらえ説明しています。

次に2つ目は、「ライフロール」です。
私たちは、人生の中でさまざまな役割を持っています。
大きく分けると、働く人であり、子(親との関係で)であり、親(自分の子との関係)であり、配偶者(結婚相手との関係)でありと、複数の役割を並行して持ちながら生きています。
自分は、いまどんなライフステージにいるのか、またどんなライフロールを持っているのかを考えるのは、これからのキャリアを設計するに当たって大変役に立ちます。

 スーパーは、人はキャリアを通じて、「自分らしさ」を発揮しようとすると指摘しました。
正確には、スーパーは「自己概念」という言葉を使っています。
これは、「自分は何者か?」「自分は一体どういう存在なのか?」「他人は自分をどう見ているか?」という自分に対する自分自身、および他人から見た自分のイメージのことです。

「自己概念」を分かりやすくいい換えるなら、その人が持つ特徴的な「自分らしさ」とだと思います。
「自分らしさ」を発揮するというのは、日々の生活で、「自分は何を大切にするか」ということを基準に、どのように行動するかということです。

 より具体的にいうならば、「自分らしさ」は、学生、職業人、配偶者など、人生の中でのさまざまな役割、すなわち「ライフロール」を演じる中で形成されていくものです。

 また、スーパーはキャリアにおける「価値観」の重要性を説きました。人は、仕事をする職業人として、あるいは、ほかの役割を通じて、自分が重要と考える価値観を達成しようとするというものです。


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